股関節痛
股関節は、太ももの骨(大腿骨=だいたいこつ)の上の端にある骨頭(こっとう)という丸い部分が、寛骨臼(かんこつきゅう) という骨盤(こつばん)のくぼみに、はまり込むような形になっており、その構造上、脚をさまざまな方向に動かすことができます。
関節は、骨の表面がとても滑らかで弾力のある軟骨と呼ばれる組織でおおわれており、その軟骨が関節を動かしたり、体重がかかったときの衝撃をやわらげるクッションの役目をしています。
健康な状態の膝関節と関節炎の状態
軟骨は耐久性があるものですが、年齢を重ねるにつれてすり減っていきます。関節を守っている軟骨がすり減ることにより、徐々に変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)を発症します。そして股関節を動かしたり、体重がかかるたびに、すり減った軟骨の下の骨同士がこすれ合って痛むようになります。
首痛4
首の痛みの治療法には、大別すると次の3つがあります。(1) 生活指導(初期段階)
医師の指導によって日常の生活習慣(姿勢や運動など)を改善し、予防する方法です。(2) 保存療法(症状が少し進んだ段階)
鎮痛薬などで首の痛みを軽減しながら、悪化しないようにする治療法です。牽引(首をひっぱる)、温熱(首周辺を温める)などの療法も含まれます。(3) 手術療法(かなり進んだ段階)
(1)と(2)の方法では改善されず、強い脊髄症状がみられる場合などには、手術を選択する方法もあります。発症した場所や程度によって、手術の方法は異なります。ただし頚椎の手術の場合、すべての症状を解消することは難しく、一部の症状が残るケースも少なくありません。また、合併症を起こすこともあるので、リスクについても医師からよく話を聞いておくことが大切です。
首痛4
(3) 脊柱靱帯骨化症(せきちゅうじんたいこっかしょう)
脊柱(背骨)の骨どうしをつなぐ靱帯が厚くなり、骨化していく病気です。原因はまだ不明ですが、骨化によって脊髄が圧迫されると、首の痛み、手足のしびれや麻痺など、頚椎症と同様の症状がみられます(※3)。受診して、どの部分の靱帯に障害が起きているかを検査し、適切な治療を受ける必要があります。
(4) その他
肺炎などを起こしたあと、細菌が頚椎に感染すると、首の痛みや発熱などの症状を起こすことがあります。この場合は、抗菌薬などで治療する必要があります。
また、頚椎にできた腫瘍によって、神経や脊髄が圧迫された場合も、首の痛みなどの症状が起こります。首を動かさなくて痛みが続く場合には、早めに検査を受け、良性や悪性かを調べて適切な治療を受けることが大切です。
(※3)脊柱靱帯骨化症は、血糖値が高い人に多くみられることから、糖尿病ともなんらかの関係があると推測されています。
首痛3
ちょっと気になる首の障害首の痛みのほかに、手足にしびれなどがある場合には、ちょっと注意が必要です。頚椎に、次のような障害が起こっている可能性があります。
(1) 頚椎症(けいついしょう)
加齢などによって椎間板の柔軟性が低下すると、骨と骨の間のクッションが弱くなり、頚椎そのものに強い力がかかって変形を起こしやすくなります。その結果、頚椎から腕へのびる神経が圧迫され、手や指のしびれ、感覚異常(感覚がない)、手が動きにくい、といった症状がみられます(神経根症状)。
また、脊髄が圧迫されると、脊髄は全身につながる神経の中心なので、あちこちにさまざまな症状が起こります(脊髄症状)。
典型的な症状として、手のしびれや麻痺(ボタンがかけにくい、字がきちんと書けない、はしが持ちにくいなど)、脚のしびれや麻痺(つまずきやすい、脚が動かしにくいなど)、排せつ障害(尿が出にくい、トイレが近い、便秘など)があります。(2) 頚椎椎間板ヘルニア(けいついついかんばんヘルニア)
椎間板にはゼリー状の物質が詰まっていて、クッションの役割をしています。加齢などよって頚椎の椎間板自体が変形した場合にも、神経や脊髄を圧迫すると、頚椎症と同様の症状を起こします。
(1)の頚椎症は50歳以上の中高年に多くみられますが、(2)の椎間板ヘルニアは30~40歳代の比較的若い世代にも少なくありません。
(1)と(2)は、首のこりや筋肉痛をのぞくと、首の障害で最も多くみられる症状です。どちらも放置していると悪化しやすく、痛みなども激しくなるので、早めに受診しましょう。
首痛2
運動で首などをリラックスさせるパソコンの普及もあって、首の痛みを訴える人が増えています。その最大の原因は、よくない姿勢を長時間続けることです。
パソコン作業をしている人の多くが、背中を丸め、顔を少し前につき出すような姿勢をしています(今のあなたの姿勢はどうですか?)。
この姿勢は、頚椎には不自然な状態です。特に、アゴをつき出すと、首が後ろに反り、頚椎や首の筋肉を緊張させます。長時間続けていると、首や肩の血液の流れが悪くなり、疲労物質の乳酸などが蓄積し、こりや痛みを引き起こします(※2)。
パソコン作業にかぎらず、一般的なデスクワークや、テレビをみているときなども、同様のことがいえるので注意が必要です。
首の痛みの予防と改善の第一歩として、背筋を伸ばし(背中をいすの背につける)、アゴを少し引く姿勢を心がけましょう(時々自分の姿勢を見直し、意識的に姿勢を整える習慣を身につける)。
また、長時間同じ姿勢を続けると、首の筋肉や頚椎に大きな負担となります。30分に一度は席を立ち、次のような運動をします。
(1) 首を左右にゆっくり倒す(5秒くらいずつ交互に5回)
(2) 顔を左右にゆっくり向ける(首の筋が少し張る位置まで向ける。5秒ずつ交互に5回)
(3) 肩を大きくゆっくり回す(前回しと後ろ回しを5回ずつ)
(4) 腕を上げてブルブルとふるわす(腕を下げてブルブルふるわす)全部やっても3分程度なので、忙しいときにも合間をみつけてやりましょう。
からだを少し動かすだけで、血行がよくなり、疲労物質などがたまりにくくなります。これらの運動は首、肩、腕などをリラックスさせるためなので、力をいれず、ゆっくりやるのがコツです(急に強く動かすと、筋肉をいためることがあるので注意)。
ただし、首の痛みが強い場合には、いきなり運動をしないこと。受診して鎮痛薬などを処方してもらい、その上で医師の指導のもとで運動を始めてください。
また、眼鏡の度が合っていないと、デスクワークのときに前かがみの姿勢になりがちです。背筋を伸ばし、アゴを引いた姿勢で見やすいように、眼鏡の調整をしましょう。(※2)最近の研究では乳酸そのものが痛みの原因ではなく、同時に生成されるヒスタミン、キニン、プロスタグランジンなどの物質が、痛みを引き起こすとも推測されています。痛みの発生メカニズムには、まだ不明の部分が多くあります。
首痛
首にかかる大きな負担
首の痛み...その原因と解消法 首の痛みは、およそ7割の人が一生に一度は経験するといわれるほど、よくみられる症状です。
首の骨(頚椎=けいつい)は、重さが6~8キロもある頭を支え、上下左右に動かしたり、回転させたりと、複雑な動きをコントロールしています。それだけに首には日ごろから大きな負担がかかりますが、加齢によって首の筋肉が弱ったり、運動不足で首をあまり動かさないでいると、首の筋を違えたり、こりから筋肉痛を起こしたりします。
首の痛みの多くはこうしたタイプで、日常の習慣を見直したり、首の筋肉を鍛えることで改善されます。
しかし、加齢によって頚椎そのものも老化します。頚椎がすり減ったり、クッションとなっている椎間板(ついかんばん)の変形が生じると、慢性的な痛みやしびれを起こすようになります。
頚椎の中央には、神経幹である脊髄(せきずい)がとおり、脊髄から枝分かれした神経が肩や腕へとつながっています(※1)。そのため頚椎が変形すると、首の痛みだけでなく、肩の痛みや手のしびれ、あるいは脚のしびれによる歩行障害、さらには排尿障害まで起こすこともあります。
こうした症状が起こるようになると、本人もつらく、また、治療にも長い時間がかかり、ケースによっては手術が必要となります。できれば初期段階(首のこりや筋肉痛などの段階)で、早めに対処することが望まれます。
(※1)頚椎は、背骨の最上部にある7つの椎骨をいいます。椎骨と椎骨の間には、クッションとなる椎間板があります。また、頚椎を縦に貫く形で脊柱管(せきちゅうかん)という空洞があり、その中を脊髄がとおっています。頚椎や椎間板が変形して脊髄を圧迫すると、さまざまな症状が起こります。
肩関節3
スポーツによる肩の痛み
最近は中高年の方に、スポーツが原因となる肩痛を起こす例が増えています。中高年の場合には回復に時間がかかったり、慢性化しやすいといった傾向があるので注意が必要です。
スポーツによる肩の痛みには大別すると、肩(腕)を大きく動かすことによるもの(野球、テニス、水泳、ゴルフなど)、打撲などの衝撃によるもの(サッカー、バスケットボール、野球など)があります。
損傷を受ける箇所などによって、次のようなさまざまな障害がみられます。
<腱板損傷>…肩の奥にある回旋筋腱板(小さな筋肉群と腱)が傷つき、炎症から痛みが生じる。
<インピンジメント症候群>…腱板の一部や肩の動きを滑らかにする滑液包が変性し、上腕骨先端とぶつかり炎症を起こす。
<上腕二頭筋長頭炎>…上腕二頭筋(力こぶを作る筋肉)の一部が上腕骨と接触し、炎症を起こす。
<脱臼>…転倒時の打撲や無理な動きから、肩関節がずれる。腱板損傷をともなうことも。
スポーツによる肩の痛みは、腱板断裂や骨折など重症化していることもあります。自己判断せず、冷湿布などで痛みが引かない場合には早めに受診しましょう。
また、予防のためには、次のことに注意することが大切です。
・運動を始める前に十分な準備運動をする。
・やり過ぎない(張り切りすぎない)。
・痛みを感じたらしばらく休む。
・睡眠不足のときはやめるか、軽めにする。
・日常生活にストレッチ運動を取り入れる。
肩関節2
四十肩・五十肩の対処法
四十肩・五十肩は、あるとき急に起こります。腕を上げようとすると、肩関節のあたりに痛みと違和感をおぼえ、上がらなくなるのです(通常は片方の肩)。上方向だけでなく、前に手を伸ばしたり、洋服の袖に手を通そうとしたときなどにも、痛みが起こって上がらなくなります(※2)。
そのため肩をかばって日常の動作が不自然になり、肩や首周辺のこりや筋違いを誘発したり、睡眠中にも痛みで目をさまし、睡眠不足になるなど、日常生活にもさまざまな支障が出てきます。
ごく初期の四十肩・五十肩なら、温水シャワーを肩にあてるとスッと腕が上がることもあります。また、もう片方の手でサポートしてやると、あまり痛みを感じずに腕が上がります。
こうした軽症段階の四十肩・五十肩は、意識的に腕を動かすことで改善することができます。人によって、また、症状によって効果は異なりますが、次のような方法を試してみましょう。
(A)2~3キロの軽めのダンベル(あるいはそれに代わるもの)を持ち、腕をだらんと下げて、振り子のようにダンベルをゆっくり前後左右に振る運動をする。
(B)痛む方の腕の手首を、動くほうの手で上からつかみ、頭越しにゆっくり引っ張り上げる(痛む肩周辺を伸ばす)。
ただし、ちょっと腕を動かすだけでも肩が痛む場合(急性)は、肩を動かさないようにし、早めに受診しましょう(整形外科など)。また、症状が似ていても、ほかの病気の可能性もあるので、原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です(※3)。
(※2)四十肩・五十肩は、正式には「肩関節周囲炎」といいます。その名称からもわかるように、関節だけでなく、その周辺のどこかに炎症が起きることが原因です。
(※3)四十肩・五十肩と似た症状の肩痛に、腱板の部分に石灰成分が沈着して炎症を起こす例があります(石灰沈着性腱板炎)。この場合は、肩を少し動かすだけでも強い痛みを生じやすいので、受診して消炎鎮痛薬などによる治療を受ける必要があります。