ギックリ腰2
まずウエストライン、ベルトのラインが一番腰の負担がかかる部分なので、そこを猫背になった後にリセットします。足は肩幅より少し広めで平行に開き、手はなるべく小指と小指をそろえると、胸が張って肩甲骨が寄ります(ただし、五十肩など肩が痛い人は無理しないでください)。腰を反らすというよりも、骨盤を前にぐっと押し出すイメージで、あごを引いたまま「ふー」と息を吐きながら数を「1、2、3」と数えます。
介護職や看護師には腰痛が多いと言われますが、集団でこの体操に取り組むと、1年後にはかなり良い結果が出ています。痛みを取るのに重要な背中の血流を良くするというデータもあります。多くやろうとすると続かないので、デスクワークでも作業でも、猫背が続いてちょっと違和感がある時に、「借金がたまったな」と1回だけリセットすることです。ソファで座りっぱなしになったり重い物を持ったりした後に、1回か2回やればいいのです。
一般的にデスクワークは猫背になりますが、座りっぱなしは「セデンタリー・ライフスタイル」といって、健康に害が大きいことが分かっているので、ときどき立ってこの体操をすることをお勧めしています。腰に違和感がある時に、よく腹筋運動をする人がいますが、雑に勢いよくやると、かえって腰痛を悪化してしまいます。腹筋運動をする場合は、その前後にこの体操をすると、いいのではないかと思っています。
ギックリ腰
わずか3秒で劇的効果
簡単にできて腰痛を予防し、さらには改善にも導いてくれる体操をご紹介します。私は「これだけ体操(R)」と名付けました。皆さん運動や体操はなかなか続かないので、まず「これだけはお願い!」という意味で名付けました。
猫背や前かがみになった状態をリセットするための体操です。前かがみになることを、私は「腰痛の借金がたまる」と呼びますが、その“借金”を返す意味があります。ただご高齢の人に多い、神経症状がある腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)の人は注意してください。歩いていてお尻から足がしびれる人は、腰を反らすとその症状が誘発される可能性があるため注意が必要ですが、やってみて痛みやしびれが太もものほうへ響かなければ大丈夫です。
ガンになりにくい
ノンレム睡眠をとるようにするとガンになりにくいようにです。
深い眠りになるようになる前にリラックス出来るようにしましょう!
ギックリ腰5
自分でコントロールを
世界的には今、「自分でコントロールできる」というのが腰痛のキーワードです。専門的には「セルフマネージメント」「セルフケア」と言います。もちろん必要であれば、積極的に医師を頼っていただきたいですし、マッサージや整体院に行くことも否定しません。ただ、受動的治療と言って、受け身で名医を探し求めたり器具や施術に頼る人は、結局腰痛が慢性化して医療費もかかることが分かっています。こういう時はこの体操をすればいいといった具合に、対処法を自ら身に付けていくことが重要だと思います。
ギックリ腰4
また、今はせき、くしゃみをしやすい時期ですが、その時には「ハリ胸」までいかなくても、前に手をつくだけでずいぶん腰の負担が減らせます。
立ってテーブルに、あるいは座ったまま太ももに、ちょっとハリ胸で手をつくと、腰にかかる負担をずいぶん軽減できます。手をつくことが本当に、ちょっとしたぎっくり腰予防に役立つのです。
くしゃみをすると、ウエストラインの椎間板には最大300キロ・グラム重、つまり相撲取り2人分ぐらいの負荷がかかります。負荷が340キロ・グラム重を超えると、ぎっくり腰やヘルニアが起こるとされますが、それが手をつく工夫で、実に半分以下まで椎間板への負荷を減らせるのです。
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慢性腰痛の原因は脳?
腰痛に脳が関わっているというのは、例えばぎっくり腰になった時、「どうなってしまうのか?」「いつ治るのか?」と不安や恐怖が強まると、脳のある部分が過剰に興奮して機能を変えてしまいます。人間はよくできていて、痛みが起こると体の中で痛みを抑える物質が出ますが、それが出にくくなってしまう。その結果、痛みに過敏になり、痛みが怖いから安静にして体を動かさないと、腰の部分でも痛み物質が出る――という悪循環になるのです。
医師は患者さんに無駄な心配を与えないことが、腰痛の初期治療として最も重要です。交通事故でのむち打ちもそうですが、初期段階の不安や恐怖が強まると、何年にもわたり痛みや障害を抱えることにつながります。そこを慢性化させないよう、初期に骨折や細菌感染、がんの転移といった重篤な原因がないと分かれば、自分は心配のいらない青信号だと思って、なるべく体を今まで通り動かす方が、経過が良いのです。
また、今はまだストレス対処法などは病院であまり教えておらず、痛みがあると動いてはいけないと思ってしまいますが、「自信を持って動きましょう」と考え方と行動を修正しつつ教育する治療法を、専門的には認知行動療法※といいます。世界的にその効果が認められており、日本ではまだ導入が遅れていますが、厚生労働省の研究班などで取り組まれています。
※認知行動療法
ものの考え方や受け取り方に働きかけ、気持ちを前向きにして行動を変える治療法
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原因の85%は「不明」
ほとんどの場合、腰痛の真の原因を見極めることは難しいとされています。世界的にはクリニックにかかる人で、MRI(磁気共鳴画像)やX線検査、医師の診察で原因が特定できるのは、約15%にすぎません。ただ裏を返すと、原因が特定できる病気の中には心配する病気も入っていますので、約85%の方は心配する病気が特になく、いわば「青信号の腰痛」であるのです。
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ぎっくり腰は西洋では「魔女の一撃」と言い、原因を示す正式な医学用語ではありませんが、悪い病気がない急性の腰痛のことを、日本ではぎっくり腰と呼ぶことが多いのです。これに対し、世界標準として図4の重篤な赤い色の部分、「赤信号の腰痛」と呼ばれますが、医師が「治療した方がいい」と想定される腰痛を指します。神経症状を出す原因の代表格が脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)と椎間板ヘルニアです。
約85%の「心配のない腰痛」の中に、なんとなく長引いてしまう、世界的には「黄信号の腰痛」があります。つまり青信号の腰痛は防げるし、コントロールできるのですが、悪い病気がないのに重症化してしまう「黄信号の腰痛」が意外と多く、その原因はストレスや腰痛に対する不安・恐怖といった心理社会的因子だということが、世界的に認められています。
ギックリ腰
腰痛の新常識 動かしながら治し、予防するのが世界標準の考え方です。オーストラリアでは州や国を挙げて、腰痛の専門家や芸能人、著名人が「動いた方がいいよ」とキャンペーンしているほどで、医療費も国民の腰痛も減りつつあります。 ただまれにですが、糖尿病や免疫が低い病気を抱えている人が、運悪く腰に細菌がついてしまう化膿性脊椎炎の場合や、骨粗しょう症に伴い骨折してしまった時などでは、一時的に安静が治療として必要です。ただそれ以外の人で、安静にした方がいい例は極めて少ないと思います。
ぎっくり腰は動かして治す
「安静にしない」が共通認識
世界の多くの国の診療ガイドラインには、ぎっくり腰を代表とする腰痛が起こった場合は3日以上の安静は良くなく、痛みの範囲内で動いた方が良いとされています。様々な研究結果から、3日以上安静にした人の方が、ふだん通り動いた人よりも、その後の経過が悪いことが分かってきたのです。腰痛への認識は、以前と大きく変わってきています。
腰痛の慢性化率は高いですが、信頼できる研究によると、腰痛でクリニックにかかった人の3分の2には、1年後も腰痛があるとされています。今回、街頭でどのような対処をしているか聞いてみたところ、「安静にする」「コルセットや湿布、痛み止め薬を使う」「整体院やマッサージ店に行く」など様々でしたが、一番多かったのが「ストレッチをする」でした。
ぎっくり腰は「動かして治す」…腰痛の改善と治療の新常識
実はこのストレッチはとても良いことで、腰痛を改善するのに効果的です。逆にコルセットは腰の安静につながり、そのことがかえって痛みを過敏にするとされており、安静のし過ぎは“百害あって一利なし”なのです。
反り腰8
【大殿筋を鍛える】
もも上げ体操
うつぶせになり、お腹の下に枕やクッションを入れる。ひざを曲げ、左のお尻の力だけを使って、左もも全体を真上に持ち上げて5秒キープする。左右ともに5回ずつ行う。
■無理せず徐々に回数を増やして継続
いずれの運動も、腰痛があるときは無理をしないことが大切です。一つひとつの運動の間に10秒ほどの小休止を入れること。ゆっくりと、一定のリズムで行い、痛みが出たらすぐにやめましょう。
「体操」という名前がついている鍛える動きは、最初はそれぞれの運動を5回ずつ行います。慣れてきたら徐々に増やしていき、最終的には10回できることを目指します。続けるうちに筋肉が鍛えられてくるので、無理なくできるはず。
腰痛が軽くなったからといってやめてはいけませんよ。筋肉のバランスが崩れれば、また元に戻ってしまいます。きちんと、予防として続けていくことが大事です。
今回のストレッチングと体操をひととおり行ったら、両足を地面にしっかりつけて立ってみましょう。どうでしょうか。きれいな立ち姿勢を邪魔していた筋肉がほぐれ、姿勢を保持する筋肉が鍛えられると、無理なくすぅっと背すじが伸び、良い姿勢がとれることを実感できるのではないでしょうか。
このきちんとした立ち方を体に染みこませましょう。仕事をしているときや、立っているとき、前後の筋肉バランスが崩れていることに早めに気づくように注意して、こまめに修正しましょう。