ギックリ腰3
慢性腰痛の原因は脳?
腰痛に脳が関わっているというのは、例えばぎっくり腰になった時、「どうなってしまうのか?」「いつ治るのか?」と不安や恐怖が強まると、脳のある部分が過剰に興奮して機能を変えてしまいます。人間はよくできていて、痛みが起こると体の中で痛みを抑える物質が出ますが、それが出にくくなってしまう。その結果、痛みに過敏になり、痛みが怖いから安静にして体を動かさないと、腰の部分でも痛み物質が出る――という悪循環になるのです。
医師は患者さんに無駄な心配を与えないことが、腰痛の初期治療として最も重要です。交通事故でのむち打ちもそうですが、初期段階の不安や恐怖が強まると、何年にもわたり痛みや障害を抱えることにつながります。そこを慢性化させないよう、初期に骨折や細菌感染、がんの転移といった重篤な原因がないと分かれば、自分は心配のいらない青信号だと思って、なるべく体を今まで通り動かす方が、経過が良いのです。
また、今はまだストレス対処法などは病院であまり教えておらず、痛みがあると動いてはいけないと思ってしまいますが、「自信を持って動きましょう」と考え方と行動を修正しつつ教育する治療法を、専門的には認知行動療法※といいます。世界的にその効果が認められており、日本ではまだ導入が遅れていますが、厚生労働省の研究班などで取り組まれています。
※認知行動療法
ものの考え方や受け取り方に働きかけ、気持ちを前向きにして行動を変える治療法