なぜ、本を読むだけで腰痛が改善するのか?
それは、本を読むことで最新の正しい知識を得ることができれば、腰痛への恐怖心が消え、結果的に安心を得ることにつながるからだ。腰痛は恐くない。たとえものすごく痛くても、ほとんどの場合、腰ではそうたいしたことは起きていない。そもそも、急性の腰痛は放っておけば自然治癒するもの──そんな正しい知識があるかないかの差が、その後の経過に大きな影響を及ぼしているのだ。腰痛は「安全」だと考え方を変える
本気で腰痛とさよならしたい人は、まず科学的根拠に基づいて書かれた本を読むことをおすすめする。腰痛が恐くなくなることこそが、腰痛改善への近道だからだ。今日現在、腰痛に対して、なにをすればいいかはもうわかっている。腰痛は「安全」だと考え方を変え、「勇気」を持って身体を動かすこと。これが現時点で、世界最高の腰痛改善法であり、もはやそこに腰の「治療」は必要ない。ギックリ腰を一瞬で治してしまったさんまさんの話をテレビで観ていたほとんどの人は、おもわず「ホンマでっか!?」とツッコミをいれたに違いない。しかし、最新の腰痛研究について学んだ人なら、「ホンマですよ!」とおもわず身を乗り出したはずである。
ギックリ腰
安静にすれば再発する可能性が高くなる
ギックリ腰になったことのある人ならわかると思う。アレが、どれほど痛くて、どれほど動けないか。腰を後ろに反らすなんて、とんでもない。そんなことができるギックリ腰など、もともとたいしたことがなかったのではないか? そう思った人がいたとしても無理はない。
この25年、世界では腰痛に関する研究が飛躍的に進んでいる。長い間、腰痛といえば、骨や関節、椎間板や靭帯、筋肉など、腰の部分的な「損傷」だと思われてきた。ところがさまざまな研究により、「慢性の腰痛」は、「腰の問題」というよりは、「脳」そして、その「脳」と「心理社会的要因」との関連が強いということがわかりはじめている。
「急性腰痛」、つまりギックリ腰に関しては、「安静にすれば痛みが長引き、再発する可能性が高くなる」ことがわかっている。
30代から鍛える
30代から鍛える習慣をつけておくのが理想的
筋肉に限らず、われわれの身体機能は加齢とともに衰退します。いわゆる老化現象です。しかし、老化は避けることはできなくても、その程度を変えることは取り組み次第で可能です。筋肉に関してはしっかりと運動、特に筋トレを行うことでサルコペニアを食い止めることができます。逆にほとんど動かずに家でゴロゴロ過ごしていたら、よりサルコペニアが進んでしまいます。50代でも若々しく40代のように見える人がいますが、それなりに理由があります。一方で老けた、覇気のない60代に見える50代の人もいます。やはりそこにもそれなりの理由があります。どうせなら若く見えるほうでありたいですよね。なお、筋トレに関しては始めるのに遅すぎることはないのですが、やはり早めに手を打っておくに越したことはありません。筋肉の細胞数が減少し始める30代。このころからしっかり鍛える習慣を身につけておくのが筋肉の細胞数の減少を食いとめるためには理想です。少なくとも細胞数の減少が急速に進む50~60歳代までには筋トレを始めたいところです。
筋トレは何歳からでもOK
「今さら遅い」なんてことはない
「年をとってから筋トレを始めても筋肉はつくの?」などと疑問に思われるかもしれません。
答えは断然「イエス」です。
ものすごい筋肉をした高齢のボディビルダーの中には、40、50歳の中年から筋トレを始めた方も少なからずいらっしゃいます。
高齢者の筋トレ効果を示す研究はたくさんあって、70歳でも80歳でも、10回をなんとか反復できるくらいに強めの負荷でしっかりと筋トレをすれば筋肉は大きく成長します。一方で軽めの負荷での筋トレでは、ほとんど筋肉が大きくならないという研究もたくさんあります。
図表1は、60~72歳の被験者が脚の高負荷筋トレを、週3回行った実験の結果です。
3カ月間の筋トレ実施によって、なんと脚の筋肉が平均で11%も肥大しています。高齢者ということで元の体力のレベルが低く、筋肉が肥大しやすいという要素はあるでしょうが、値そのものは、若者の場合の筋トレ実験と比べて遜色ありません。
筋肉を減らさないためには筋トレが一番
近年では80歳どころか、90歳、100歳までご在命の方も珍しくなくなってきています。90歳、100歳になればさらに筋肉細胞の死滅、筋肉の萎縮は進むと考えられます。ということは、長生きするほど、サルコペニア予防の重要性がより高まるわけです。そして、このサルコペニア予防として現在分かっている最も効果的な運動は、筋肉に強い負荷をかけて鍛える筋トレです。高齢でもしっかりと筋トレをしている方は明らかに体つきが違いますよね。筋トレ実施者では高齢でも一般の筋トレを行っていない若年者よりも筋力が強く、加齢による筋力の低下率は非実施者の3分の1程度に抑えられているという報告があります。ほかの運動も効果がないわけではありませんが、筋トレほどの明らかな効果を得るのは難しいようです。ランニングや水泳を行っている高齢者では、運動を行っていない同年代の人と筋肉量にほとんど差がないという報告もあります。「サルコペニア予防にはしっかり筋トレ!」が合言葉だといえますね。を減らさないためには「筋トレ」が一番
近年では80歳どころか、90歳、100歳までご在命の方も珍しくなくなってきています。90歳、100歳になればさらに筋肉細胞の死滅、筋肉の萎縮は進むと考えられます。ということは、長生きするほど、サルコペニア予防の重要性がより高まるわけです。そして、このサルコペニア予防として現在分かっている最も効果的な運動は、筋肉に強い負荷をかけて鍛える筋トレです。高齢でもしっかりと筋トレをしている方は明らかに体つきが違いますよね。筋トレ実施者では高齢でも一般の筋トレを行っていない若年者よりも筋力が強く、加齢による筋力の低下率は非実施者の3分の1程度に抑えられているという報告があります。ほかの運動も効果がないわけではありませんが、筋トレほどの明らかな効果を得るのは難しいようです。ランニングや水泳を行っている高齢者では、運動を行っていない同年代の人と筋肉量にほとんど差がないという報告もあります。「サルコペニア予防にはしっかり筋トレ!」が合言葉だといえますね。
80歳でも筋トレをするべきといえる科学的な理由
いつまでも元気に動ける体を手に入れるためには、どうすればいいのか。NHK「みんなで筋肉体操」などで運動の効果を解説している谷本道哉・近畿大学准教授は、「日常生活に必要な筋肉ほど、早く衰える。だが、筋肉は死ぬまでつく。何歳でも筋トレをするべきだ」という――。
日常生活に必要な筋肉ほど、早く衰える
加齢に伴って筋肉がやせ衰えていくことを「加齢性筋萎縮症」、「サルコペニア」といいます。なんだか恐ろしい響きですね。
そしてサルコペニアはやっかいなことに、体重を支える下半身の筋肉や、姿勢を支える腹筋群、背筋群といった「日常生活に直結した筋肉」において激しく進行します。元気に日常生活を自立して過ごすための大事な筋肉ほど衰えやすいのです。
たとえば、体重を支える太ももの前の筋肉では、30歳代くらいから萎縮し始め、80歳くらいまでに、平均して20歳代の半分程度にまで筋肉が細くなります。
筋力の強さは主に筋肉の太さで決まりますので80歳で脚の筋力は半分になってしまう計算になります。太さ以外の要因もあるので正確には半分以下ですが。
ということは、若いころに片足で立ち上がれないくらいの筋力しかない人は「特に対策をしていなければ」80歳になったときには自立して生活するのが困難になる、と言い換えられるでしょう。70歳まで働かなければならない時代に、これはとても不安な予測です。
脚の筋肉の衰えは特に顕著であるうえに生活機能と直結します。その衰えを自覚しやすいことから、「老いは足元からやってくる」などといわれます。「足腰を鍛えていつまでも元気に」などというのも、足腰の衰えが高齢者から元気さを奪うからに相違ありません。
それゆえいつまでも活動的で元気に過ごすためには、サルコペニア、特に脚の筋肉のサルコペニアをいかに防ぐかが極めて重要となるのです。
働き盛りの体力低下は重大な将来リスク
働き盛りの体力低下は重大な将来リスク
10月8日の体育の日、スポーツ庁は「2017年度体力・運動能力調査」を公表した。65歳から79歳では男女ともに体力の向上が続いているのに対し、30~40代では男女ともに体力が低下傾向にあり、特に20~40代で「週1日以上運動する」と答えた女性の比率は、20年前と比較して10ポイント下がっているというものだった。働き盛りの年代に体力低下の兆候があることは、日本の社会にとって将来の大きな不安材料だろう。忙しくても日常生活に運動習慣を取り入れなければ、「生涯現役」は危うい。大江氏に、働き盛りの年代から日常生活で手軽に取り入れられるロコモ対策を聞いてみた。
かじやますみこ『人生100年、自分の足で歩く 寝たきりにならない方法教えます』(プレジデント社)では、大江隆史氏によるロコモとロコモ対策のさらに詳しい解説が読める。
「日本整形外科学会では、ロコモを防ぐためのトレーニングとして、バランス能力を養う片脚立ち(左右1分間ずつ1日3回)と、下肢の筋力をつけるスクワット(1回5~6回を1日3回)の2つを推奨しています。それだけでは物足りない方には、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、歩くスピードを上げるなど、通勤時間を運動時間に変えることも効果があります」「運動習慣に加えて毎日の栄養摂取も大切で、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素を毎日3回の食事から取ることが大切です。中でも、筋肉を増やすためにはタンパク質、骨を強くするためにはカルシウムだけでなく、タンパク質、ビタミンD(サケ、干しシイタケ)とビタミンK(納豆、青菜)が必要です。ビタミンDは日光を浴びることで体内でもつくられるので、天気の良い日は外に出て散歩や運動を心がけてください」毎日の生活の中で、ほんの少しロコモを意識し日常の生活習慣にすることが将来の寝たきり防止につながると言えそうだ。
骨、筋肉量は40代でピークアウトする
ロコモは、静かに長い時間をかけて骨、筋肉、関節などをむしばんでいく。それはどのようなメカニズムなのか。大江氏はこう解説する。
「骨や筋肉の量はおよそ20~30代でピークを迎えます。特に骨は、成長ホルモンが出る成長期に強くなり、男女ともに20歳ごろに骨量の最大値(ピークボーンマス)を迎える。そこから20代、30代、40代前半ぐらいまで平坦に推移し、女性の場合は40代後半から、男性の場合は60歳ぐらいから下降線をたどります」
「骨を強く保つためには、ピークボーンマスをできるだけ高くし、平坦な時期を長く保って、下降のカーブを緩やかにすることが必要です。適度な運動で刺激を与え、適切な栄養を取ることで、それが可能になることが最近の研究でわかってきました。若いときからロコモを意識して対策をするかしないかで、将来ロコモになるリスク度は大きく異なります。特に女性は、男性と比較するとピークボーンマスが低いので、衰えが早くなってしまう。そのため、骨や筋肉量がピークを越える40代から対策を始めることが不可欠です」
ロコモは高齢者だけの問題ではない
親の心配ならいざ知らず、自分にはまだまだ関係ないと思っているかもしれないが、ロコモは決して高齢者だけの問題ではない。たとえば、2016年に行われた東京・丸の内近辺で働く20~30代の女性352名を対象とした調査では、参加者の30%が「ロコモ度1(ロコモが始まっている)」、4%が「ロコモ度2(ロコモが進行している)」と判定された(2016年「第3期まるのうち保険室報告書」三菱地所・ラブテリ)。2016年度からは、運動器疾患を早期発見するための「運動器検診」が、学校検診の必須項目に加えられている。
日本整形外科学会が2010年にロコモの予防・啓発の推進を目的に立ち上げた組織、「ロコモ チャレンジ! 推進協議会」の大江隆史委員長は、こう話す。
「ロコモ、すなわち運動器障害に伴う移動機能の低下は確かに高齢者に多く見られますが、運動器疾患がやっかいなのは慢性的に進行し、その経過が長いこと。初期段階では症状がほとんどない状態が長く続くため、患者は医療機関を受診しないことが多いのです。早期発見は極めて難しく、実際に痛みなどの自覚症状が出始めたときには病気がかなり進んでしまっていることが少なくない。高齢となって症状が出る前の若い年代、働き盛りの年代からロコモを知り、予防的な措置を取ることが極めて重要です」
立つ歩くが難しくなるロコモ
「立つ」「歩く」が難しくなるロコモ
ロコモティブシンドローム略称:ロコモをご存じだろうか。骨、筋肉、関節、軟骨、椎間板など運動器のいずれか、あるいは複数が加齢により衰えて障害が起こり、「立つ」、「歩く」といった移動機能が低下した状態のことだ。
最新の「国民生活基礎調査」(厚生労働省 2016年)によれば、転倒・骨折、関節疾患、脊髄損傷などの「運動器疾患」は、要支援・要介護になる最大の原因だ。「認知症」(18%)、「脳血管疾患」(16.6%)を抑えて24.6%を占めるが、この事実は意外と知られていない。認識の低さに危機感を抱いていた日本整形外科学会は、高齢化率が21%となり、日本が「超高齢社会」となった2007年、世界に先駆けて「ロコモ」を提唱した。昨年7月には、集団検診にロコモの診断を取り入れるなど、地域を挙げてロコモの予防に取り組む神奈川県大磯町を世界保健機関(WHO)が視察。「世界のどこも行っていない先進的な取り組み」と評価したという。