筋肉
「筋肉が付きすぎると、排水溝から水が抜けていくように、どんどん体内のエネルギーを浪費してしまいます。そこで筋肉の細胞は、ミオスタチンを放出することで、筋肉が必要以上に増え過ぎるのを抑えているのです。それを発見したときは本当に驚きました」トレーニングすると、筋肉の細胞は成長しますが、同時にミオスタチンを放出して、増えすぎを抑えます。筋肉をムキムキに発達させるには、このミオスタチンによるブレーキに打ち勝つほどに、頑張ってトレーニングをする必要があるのです。努力して鍛えても、いつの間にか筋肉が減ってしまうのはミオスタチンが働いているからなのです。筋肉の細胞から放出され、筋肉の増えすぎを
筋肉の細胞から放出される「ミオスタチン」(CG)
(背景は筋肉の細胞)
次々と発見される「筋肉が出す物質」と その働き2000年代に入ると、ミオスタチン以外にも筋肉が出す物質が次々に見つかり、「マイオカイン」という総称がつけられました。いま、このマイオカインがとてもホットな研究分野になっています。2016年だけでマイオカインに関する論文が100本以上も発表されました。その中には、マイオカインの働きで「がんの増殖が抑えられた」、「うつ症状の改善に効果があらわれた」など、一見筋肉とは無関係に思える不思議な作用についての報告もあります。アメリカ国立老化研究所などのチームが2016年に発表したのは、「筋肉の働きで記憶力が高まる可能性がある」という論文です。運動をした時に筋肉の細胞から出ると考えられる「カテプシンB」という物質が増えた人ほど、記憶力テストの成績が向上。研究チームは、カテプシンBが、記憶を司る脳の「海馬」という部分の神経細胞を増やす働きをした可能性がある、と考えています。