精神的ストレスが腰痛を招く
思い込むことで不安を感じ、痛みが生じる
認知行動療法とは、説明や訓練で認知(ものの受け取り方や考え方)を変えて、精神的なストレスと上手につきあえるようにしていく治療法だ。考え方を変えることで精神的なストレスが減り、日常生活や社会生活が送りやすくなる。うつ病、ストレス障害、統合失調症などの精神障害には広く使われる方法だ。
重症の腰痛では、腰痛に対する恐れや不安を持ってしまい、社会生活や職場復帰が難しくなることがある。たとえば「少しでもかがむと痛くなる」と思い込むと、それだけで不安を感じて、長時間の外出や出勤が難しくなってしまう。
そこで、「コルセットで固定すれば大丈夫」「もし痛み出したら、休憩室で横になればいいだけ」のように考え方を変えたり、少しずつ試して自信をつけたりしていくと、職場復帰や社会復帰につながっていく。実際に、整形外科医だけではなく、精神科医、臨床心理士、理学療法士などのチームで認知行動療法に取り組んで、痛みの治療に成果を上げている医療機関が増えてきている。
ここで気をつけたいのは、「単なる気の持ちよう」と素人が決めつけないことだ。心理的なものといっても、本人は実際に激痛を感じているし、本人の意志だけで、ものの受け取り方や考え方を変えることは難しい。専門家のサポートが必要だ。ただ、いままで原因不明で治療法が見つからなかった慢性腰痛でも、心因性とわかって治療すれば、よくなる可能性がある。