タバコを喫わないのに肺がん。なぜ?
原因の1つは女性ホルモン肺腺がんの場合、喫煙も原因の1つですが、扁平上皮がんほど大きな影響はありません。では、喫煙以外の原因とは、何なのでしょうか。
近年のさまざまな調査研究から、「女性ホルモン」と「汚染大気」の2つが有力視されています。
女性ホルモン(エストロゲン)については、月経期間の長い(初潮が早く、閉経が遅い)女性や、エストロゲン補充療法を受けた女性に、肺がんの発症率が高いことが以前から報告されていました。このことからエストロゲンの影響についての研究が進められ、現在ではエストロゲンの体内合成にかかわる遺伝子と、肺がん(とくに肺腺がん)との関係や発症の仕組みが解明されつつあります(※4)。
その結果、エストロゲンの量や濃度が、肺腺がんのリスクを高める要因の1つであると考えられています。また、タバコを喫わない女性に、エストロゲンの影響が大きい傾向がみられることも指摘されています。
エストロゲンは高脂血症や高血圧の予防にも役立つ大切な女性ホルモンですが、その一方で、月経期間の長い女性やエストロゲン補充療法を受けた(受けている)女性の場合は、エストロゲン濃度が高くなる機会が増え、量も多くなります。それだけ肺腺がんのリスクも高くなることを忘れずに、定期的にCT検査を受けるようにしましょう(ちなみに男性の体内でもエストロゲンは合成されていますが、その影響についてはまだ不明です)。
(※4)国立がん研究センター研究所などによる遺伝子解析から、CYP19A1遺伝子の多型がエストロゲンの量に個人差をもたらすこと、また、エストロゲンが、肺腺がんの前駆(前段階)とされる細気管支肺胞上皮がんの発生に影響を及ぼすことがわかってきています。