腸内フローラ
腸内フローラはどうやって出来上がる?
お母さんの胎内にいる間は、赤ちゃんは無菌状態です。そして出産時に産道を通ることで、お母さんの菌を受け継ぐといわれています。赤ちゃんは生まれると呼吸を始めますが、そのときにお母さんの菌だけでなく、医療機関に棲みついている菌、医師や看護師さんたちの菌も体内に取り入れます。
また、赤ちゃんは母乳を飲み始めるとお母さんからIgA(免疫グロブリンA)という抗体を受け継ぎ、体内を細菌やウイルスの感染から守ります。母乳を飲んでいる赤ちゃんの腸内細菌の約90%がビフィズス菌といわれています。母乳に含まれるオリゴ糖がえさとなって、ビフィズス菌が増えているのです。このため、生後半年以上は母乳で育てるのがいいといわれています。
このようにして、生後1年までには赤ちゃんの腸内環境が整ってきますが、ビフィズス菌が増えるのと同時に悪玉菌や日和見菌を取り入れることで、免疫が獲得できるようになります。そして出来上がった腸内フローラは、そのまま生涯、人生のパートナーとなります。
最近では医師が「赤ちゃんとスキンシップしなさい」と指導することが増えているといわれています。授乳だけでなく「おんぶ」や「だっこ」などの触れあいによって、免疫機能が受け継がれていくと考えられるからです。
クロアチアのメルクール大学のグループの研究によると、帝王切開で生まれた赤ちゃんは、お母さんの産道や直腸に存在する善玉菌を受け継ぐことができないと報告されています。それどころか、赤ちゃんの免疫が十分に獲得できない悪玉菌が受け継がれやすいというのです。帝王切開で生まれた赤ちゃんの腸内フローラはビフィズス菌が少ないため、糖尿病患者の腸内フローラに近い状態であるとも指摘されています※3。
話は少し横道にそれますが、動物の世界でも似たようなことがあります。
コアラが食べるユーカリの葉には、有毒なタンニンが含まれています。ところがコアラの赤ちゃんは、生まれた時点ではタンニンを分解する酵素を持っていないため、ユーカリの葉を無毒化することができません。そこでお母さんの糞をなめることで、タンニンを分解する酵素を作り出す腸内細菌を受け継ぎ、生きていくために必要な腸内細菌に変えていくのです。