高齢者の便秘
高齢者の便秘は、副交感神経の低下が一因
便秘には、なんらかの原因があります。腸の働きに問題がある機能性便秘は、「弛緩(しかん)性」「直腸性」「けいれん性」などのタイプに分けられます。「弛緩性」とは、大腸の緊張がゆるんで蠕動(ぜんどう)運動が弱くなっている状態。「直腸性」は、直腸の反射が悪く、便が下に降りてきていても便意が感じにくくなっている状態。「けいれん性」は、ストレスなどによって大腸の動きが強くなった状態です。
高齢者に多いのは、大腸の動きが弱い「弛緩性」の便秘です。この原因として、最近注目されているのが、自律神経の働きです。自律神経には交感神経と副交感神経があり、アクセルとブレーキの役割をして全身を調整しています。たとえば、血管で交感神経が働くとキュッと収縮し、副交感神経が働くとゆるんで拡張します。一方、腸では交感神経が働くとゆるんで動きが弱くなり、リラックスして副交感神経に切り替わると腸が収縮し、よく動くようになります。ところが、腸を動かす副交感神経の働きは、男性では30代、女性は40代から下がり、加齢とともに低下することがわかってきました。
腸に便が長く停滞すると有害物質の侵入を防ぐ「腸管バリア機能」が低下して免疫力が下がります。すると炎症を起こすサイトカイン(生理活性物質)が増えて、腸の炎症や感染症などに対するリスクが上昇し、全身にさまざまな影響が及びます。このような腸の老化の一因に自律神経が関わっているのではないかと考えられています。