また腰痛になるのでは」という不安が悪循環につながる
東京大学医学部附属病院22世紀医療センターの松平浩氏らは、軽い腰痛をもっている日本人1,675人を対象に調査を行った。その結果、多くの人が「仕事に対する満足度が低い」「上司のサポート不足」「週労働時間が60時間以上」「日常生活や仕事に支障をきたした経験のある人が家族にいる」といった問題を抱えており、ストレスが過剰にたまっている傾向があることが判明した。
職業では専門職、事務・技術職などが多かった。「前かがみの姿勢、座位での猫背、腰を反らした状態が続くと、腰への負担が増し、それが引き金になって、椎間板の中央にある髄核が前後、あるいは左右にずれて、痛みや違和感を生じやすくなる」と、松平氏は言う。 これに、人間関係や仕事のストレス、腰痛に対する恐怖や不安などが加わると、痛みを抑えるオピオイドなどの物質の分泌が低下し、腰痛が慢性化したり再発するなど、悪循環に陥りやすくなる。 特に「また腰痛になるのでは」という不安や恐怖から過度に腰をかばってしまう「恐怖回避思考」は、腰痛の悪化につながりやすい。この思考そのものも心理的ストレスになるが、腰をかばい過ぎて体を動かさなくなると、脊椎や周辺の筋肉の柔軟さが損なわれ、かえって体の痛みが生じたり、髄核がずれた状態で固定され、腰痛が治りにくくなったり、再発するリスクが高まる。