腸内フローラ
腸内フローラが、私たちの体に与える影響にはどんなものがあるのでしょうか。
まず注目したいのが、肥満との関連です。成人の腸内細菌は「バクテロイデス門」と「フィルミクテス門」の二つの種類が優勢となっています。バクテロイデス門というのは善玉菌を好む日和見菌といわれています。フィルミクテス門というのは発酵食品に含まれている菌や皮膚に常在している菌、土壌菌などです。
腸内細菌は食べ物を分解するときにさまざまな物質を排出します。バクテロイデス門の細菌が食べ物を分解すると排出される短鎖脂肪酸は、腸から吸収されて血液を通じて全身に届けられます。この短鎖脂肪酸が脂肪細胞に働きかけると脂肪の取り込みが止まり、肥満を防いでくれるのです。逆にフィルミクテス門の細菌は食事から取り込むエネルギー量が多く、そのため肥満に結びつきやすいといわれています。
それがよくわかる研究報告があります。肥満の人と健康な人の腸内フローラでは大きな違いがあるというものです。肥満の人ではフィルミクテス門の細菌が多く、バクテロイデス門の細菌が少ないことが明らかにされているのです※1。複数の標準体型の人と肥満の人に標準カロリーの食事を3日間食べさせた後、高カロリーの食事を3日間食べさせ、それぞれの期間の排泄物に含まれたエネルギー量と腸内細菌を検査した実験も行われています。肥満の人は標準カロリー食でも高カロリー食でもエネルギー量に変化はありませんでしたが、標準体型の人が高カロリー食を摂取するとエネルギー量は減少するという結果が出ました。また、高カロリー食を摂取すると、フィルミクテス門の細菌が増加し、バクテロイデス門の細菌が減少したのです※2。
この二つの研究結果から、腸内フローラによって太りやすいかどうかが分かれてしまうのと同時に、太ることで腸内フローラも悪化すると考えられるのです。