腰痛
“センセイ”である医師から「椎間板ヘルニア」と診断された患者さんは、当然つねに腰に注意をむけ、四六時中腰のことを心配しながら生活することになる。すると、ますます「痛み」に敏感になり、負のスパイラルが永遠に繰り返されることになる。
「顔色、悪いよ」
人は、だれか3人からこう言われただけで、具合が悪くなるといわれている。これはノーシーボとよばれる「マイナスの暗示」効果だ。わかりやすくいえば、現代の「呪い」である。
「腰が悪いという思い込みが、腰痛をつくる」
日本の腰痛治療の現場では、患者さんだけではなく、医師も治療者も「呪い」にかかっていることが驚くほど多い。私も今から25年前、「椎間板ヘルニア」の「呪い」にかかっていた一人だ。私の「呪い」は強力で、3度の入院と手術をするほどだった。その後、鍼灸師になった私は、患者さんにこう説明する。
「ほとんどの椎間板ヘルニアは腰痛とは関係がない」
「腰が悪いという思い込みが、腰痛をつくる」
「思い込み」を捨てられた患者さんは、その瞬間に「腰痛」から解放される。「腰痛」がなくなるというよりは、「腰痛」にまつわる不安と心配から解放されることで痛みが遠のくというとわかりやすいだろうか。
子どもの頃に読んだお伽話。呪いにかかったお姫様を救ったのは、王子様のキスだった。「椎間板ヘルニア」の患者にとっての「王子様のキス」とは、科学的根拠といわれる「正しい知識」である。