反り腰
もともと人間の体は、前側に重みが偏っている状態なんです。ぶ厚い胸郭も内臓も、体の前側にあり、体の軸となる背骨は体のぎりぎり後ろ側にあります。だから、普通に立つだけでも前に倒れそうになる力と対抗しないといけない。そのため、姿勢を保持するための筋肉、「主要姿勢筋」はすべて体の後ろ側についているんです。頭を支える首まわりの頸部筋、背骨を支える脊柱起立筋、太もも裏側にある大腿二頭筋、足首を動かすヒラメ筋。これらの体の後ろ側にある筋肉がきちんと働いている人は、すっときれいに立つことができます。
■「反り腰」で、腰の一部分に相当の負荷がかかる
自分は「反り腰」かどうかをチェック。靴は脱ぎ、素足で壁からかかとを5cmほど離して真っすぐ立つ。頭、お尻、背中を壁や柱にぴたっとくっつけて、壁と腰の隙間に手を入れる。壁と腰の隙間に手がすぽっと入り、余裕があるようなら骨盤が前傾して腰が反っている(この記事のイラスト:もと潤子)
では、主要姿勢筋がうまく使えていない人はどうなるかというと、体の「前に倒れそう」になる力に負けてしまう。もも裏から骨盤の後ろにつながる大腿二頭筋が弱いために骨盤は前に傾く。そこで体が倒れてしまわないようにバランスをとろうと、ちょうど腰のあたりで反る。これが「反り腰」です。自分はどうだろう? と思ったら、チェックしてみましょう。本シリーズの第1回目でもお話ししましたが、腰と壁の間に手がすぽっと入るくらい余裕があるなら、骨盤が前傾して腰が反っている証拠です。腰痛は反り腰の人に圧倒的に多いんです。これは男女ともに共通しています。姿勢に何も問題がなくても、腰には大きな負担がかかります。ある実験によると、体重70kgの人の場合、最も力がかかる腰の骨には、あおむけなら30kg、立てば70kgの負荷がかかります。重心が前に出ると負荷はさらに高まり、イスに座ると100kgにもなるんです。反り腰の人は、姿勢を支えるはずの背面の筋肉がうまく働かず、この負荷を支えるために、腰の脊柱起立筋と、その近くで背骨同士をつなげている深層筋だけが常に踏ん張らないといけない。これでは腰が痛くなっても無理はありませんよね。